ガンマ線照射の概要

 照射は、コバルト60から放出されるガンマ線を利用しています。ガンマ線は電磁波(光)の一種であり、レントゲン撮影のように物質を透過することができます。
 ガンマ線が、DNAや酵素など生命維持に不可欠な生体分子を損傷させることにより、微生物を死滅させることが可能です。また、ガンマ線は高分子の構造を変化させることがあるので、プラスチックなどの高分子材料の加工に照射技術が利用されています。

グラフ

 図のように、線量が増えると微生物は指数的に減少します。微生物数が10分の1になる線量をD値と呼びます。微生物の種類により、放射線に対する抵抗性が異なるため、D値はそれぞれ異なります。細菌のうち、芽胞形成菌は放射線抵抗性が強く、D値は2kGy前後である一方、栄養型細胞などのD値は1kGy以下がほとんどです。(左図)

 線量を増やせば微生物の生存菌数は少なくなりますが、放射線により高分子の構造が変化する度合も増えることがあるため、注意が必要です。製品の初期菌数と放射線抵抗性、滅菌・殺菌(または菌数)目標レベルにより線量を設定することが必要であり、そのためには、製品に付着している微生物の種類を把握しておくことが重要です。

ガンマ線照射には以下のメリットがあります。

1.透過力が大きいので製品形態を選ばない
 ガンマ線は透過力が大きいため、製品形態に対する制限がほとんどありません。照射容器に入る寸法・重量であれば、固体、粉体、液体の製品でも、梱包されたままの状態で内部まで滅菌することができます。包装、梱包資材に関しても、ガス滅菌に使用するようなガス透過性の滅菌バッグを用意する必要がなく、対象物が密封できていれば制限はありません。未開封で処理するため、照射工程で異物が混入したり、製品のロスが発生したりすることがありません。
包装・梱包の資材・形態に制限が無いことから、製品製造の最終段階でガンマ線照射することが可能で、製造工程における厳密な微生物管理(無菌管理など)が不要になります。

2.有害残留物がなく、処理後にすぐ使用できる
 ガンマ線は電磁波(光)なので、通り抜けるだけで物質中に留まることはありません。製品はガンマ線が照射されるだけで、放射性物質である線源(コバルト)と接触することはありませんので、滅菌処理した製品から放射線が出ることはありません。ガス抜きなどの後処理が不要なので、処理後にすぐ使用できます。

反対にデメリットもあります。

 ガンマ線照射により、製品や容器・包材の材質によって、着色・照射臭・材質変化が発生する可能性があります。ガンマ線滅菌導入前に製品への影響を調べるため、試験的な照射を実施する必要があります。また、脱酸素状態や冷凍状態で照射すれば製品劣化が防げる場合もあるので、ご相談ください。

滅菌方法の比較

ガンマ線 電子線 EOG (酸化エチレンガス) 湿熱
包装形態 最終包装形態 最終包装形態
(厚み制限付き)
ガスが浸透する
包装・梱包
蒸気が浸透する
包装・梱包
製品密度 高密度でも可能 密度の小さい製品が
望ましい
ガスが浸透すれば
制限なし
蒸気が浸透すれば
制限なし
製品材質 材質によって
変色・劣化有り
材質によって
変色・劣化有り
ガスが吸着しないこと 耐熱性であること
残留物 なし なし ガス残留の可能性あり なし
処理温度 常温 常温 約 50℃ 約 120℃
後処理 不要 不要 ガス抜き 乾燥
出荷確認 線量確認 線量確認 パラメータ確認
またはBI試験
パラメータ確認
またはBI試験
処理時間 数時間 数分 数時間 数時間